高棹琢馬先生のご功績概要


高棹琢馬先生は、水文学・水資源学の分野において、山地流域における洪水流出の挙動を力学的に究明し、雨水流法(キネマティック・ウェイブ法)の基礎を世界に先駆けて築き、洪水流出予測手法の基礎理論を築くなど、水文学・水資源学の発展に貢献されました。主なご功績は以下の通りです。

洪水流出系の分析・同定・予測に関する研究

  1. 昭和34年、山地流域における雨水の挙動を力学的に究明し、最大流量の発生条件を明らかにするなど雨水流法(キネマティック・ウェイブ法)の基礎理論を築かれました。
  2. 昭和37年、山地の雨水流出過程との関連において中間流出現象の物理機構を検討することによって表面流出の変動寄与域の概念を確立し、雨水流出機構におけるその役割の重要性を明らかにされました。
  3. 河道網の形成過程を計量的に扱い、洪水流出過程の分析と予測に応用するという独創的な方法を創始されました。
  4. これらの研究は、その後の国内外の組織的研究に先駆けて20年以前に行われたもので、その成果は水文学の発展に大きく貢献したものとして国内外で高く評価されています。また、最新の洪水流出予測手法においても、その基礎理論として広く用いられており、精度の高い物理的な洪水流出予測手法の基盤をなしています。

河川・水資源システムの計画・管理に関する研究

  1. ダム貯水池群による洪水調節手法を最適化問題として捉え、動的計画法を用いたダム貯水池群の最適適応制御方式に関する研究をわが国で初めて開始されました。
  2. 降雨流出モデルに観測誤差や予測モデルの誤差に対応する確率的外乱を導入した確率的な洪水流出モデルを構成し、これを実時間での予測に用いる流出予測理論を構築されました。
  3. これらの成果は、洪水流出系の分析・同定・予測に関する研究の成果と合わせて、実際の洪水流出予測に応用されており、これらの功績によって平成7年8月には、水文・水資源学会功績賞を受賞されました